一幕一章「武林出頭」 若き後継者もいよいよ逞しく成長した。 機は熟したと見たか、王大侠は彼に告げる。 「少林寺に行くがいい」 「少林寺の、十八羅漢陣を修羅の門として潜り抜けることができるか」と。 彼の若さは、何の臆することもなかった。 すぐさま少林寺の門を叩く。 すると、門の傍で箒を手に物思いにふけっていた老僧が尋ねる。 「若いの、そんなに威勢良くどうされた」 「何、十八羅漢陣とな」 「あれはめっぽう危ないというて、もう随分と昔に封印されたのだよ」 「なに、それでも遣り合いたいか。・・・ほっほ、若いのう」 「その若さに免じて、いい事を教えようかの」 「普賢殿に行くといいぞ」 「ああ、もう何年前のことか忘れたが大分むかし」 「お主と同じく、羅漢陣に挑戦した若者がおったのじゃよ」 「若者はなあ、普賢殿で一番強い僧と真っ向勝負して勝ちよった」 「そうやって羅漢陣と戦えるだけのものを兼ね備えたことを証明したのじゃよ」 「もしお主がそれに勝てぬようでは、羅漢陣なぞに会わせてはくれぬよ」 「何せ、羅漢陣は少林寺の秘術、封印するほどのものじゃから」 「ああ、そう焦らず待ちなさい。これで傷を癒すといい」 「ありがとう、じっちゃん」 老僧が懐から出した秘薬を受け取り、門を勢い良くくぐった彼は。 彼の瞳は、はるか広い敷地の向こう側の一点を見つめている。 |