天上碑のひみつきち
一幕三章「独歩江湖」

場は甘粛省。沙州への渡し船はいつからか、滞っていた。
船乗りが櫂を持たなくなってしまったからだ。どうしたのだろう。

彼が通りかかる。
すっかり落ち込み、急に老け込んだ様子の船乗りを見て、声をかける。
娘が何者かにさらわれてしまったという。
自分の幼い頃の境遇と重ね合わせ、なんとかしてやりたいと思う。
聞けば、それは遥か西域より人攫いのためにやってきた悪い商人かも知れぬ、とのこと。

そもそも、敦煌という要害自体が西域からの異民族の侵入を防ぐための壁。
それが廃墟と化した今、もちろん船乗りも頭のどこかで危ぶんでいただろう。
まさか、自分の娘に限って・・・・。

これはなんと言うことだ。
もちろん、これで若き彼の意思が動かぬはずもない。
なんとか、美女だったらいいのにな彼の娘を救わんと。